立つ場所があること、ここにいられること

立つ場所があること、ここにいられること

忘れてはいけない2020年

なんどか書いていることでもあるんですが、
僕たちは立つ場所がなければ日々の練習も、
試行錯誤も、勉強も、思いも、
全く意味のないものになってしまいます。
自己満足で終わるといいますか。

 

立つ場所があること。
長くこのお仕事をしていると、
人前に立つことが日常になっていきます。

そうすると、
その日、その場に立ってパフォーマンスさせていただくことが
どうも当たり前のようになってしまう。

 

そこで生まれるのは油断であり、慢心であり、欲。

 

どこか雑になったり、
今回ダメでも、また次があるし。
そんな怠惰が出てきてしまう。

 

そこで僕は思うんです。

 

2020年、コロナ禍、
一体なにをしてたんだ?

 

コロナ禍、僕たちは完全に立つ場所を失いました。
人を集め、盛り上げて、握手を交わす空間。
そんな大道芸の日常が、世界レベルで「ダメ」になった。

決定していた仕事はすべて中止。
大道芸の現場もすべて、そう、全てが閉鎖状態に。

 

まだ10年ちょいではありますが、
長く続けてきた大道芸という職業を、
生きがいが、なくなりました。

 

「コロナかー。風邪?大変みたいだな。」

 

「イベント中止になっちゃった。しょうがないか。」

 

「また中止だ。大道芸で頑張ろう。」

 

「あそこの大道芸ができなくなった。あとはここだけか。」

 

「ここもなくなった…。仕事、どうしよう。」

 

短期間のうちに、じわじわと、ひとつひとつ消えていきました。

こどももまだ2歳。
仕事がなくなり、ウーバーイーツでなんとかやりくりするか、
と動き出すも、
稼ぎはたかが知れてるし。

毎日こどもと隣駅まで散歩して、
電車を見て、
妻が仕事に行く分、家事をやって、
何か打ち手はないか?
と頭を抱えながら夜を過ごし、
寝れなくなり。

 

僕は2度と経験したくない地獄のような日々でした。

 

 

今こうして立てること

あの頃に比べたら毒性も弱まってきたのか、
社会的にもコロナに対する対策、意識も当時ほどではなく寛容になってきたように感じます。
とはいえまだまだコロナ禍の影響は残っています。

でも例えば

大道芸ワールドカップin静岡が開催されたり、

僕がお世話になってきたイベントも3年ぶりに開催されたり、

新しくお声がけいただけた現場が増えて、
そのイベントも「3年ぶり」。

 

業界が活気付いてきたように感じれて、
嬉しい限りです。

 

ただ、人には「慣れ」ってものがあって、
それがどうしても、今こうしてまた人前に立てることを
「当たり前」にしてしまう。

 

「当たり前」になると、

細かい部分が雑になる。

「今日はダメだったけど、次がんばろう」
という慢心が出る。

「今日この瞬間しっかり稼がなきゃ」
と欲が出て、約束・ルール・マナーを破る。

 

その場に立てることが「当たり前」になると、
次またその場に立つ機会があると感じる。

 

コロナ禍、なにしてたんですか?

つらくなかったんですか?

 

その場に立てることは「当たり前」じゃないんです。
次はないんです。
いつもその場が僕を立たせてくれるとは限らないんです。

忘れちゃいけない、その場に立てるのは
その場に関わる方々のご厚意であること。

「当たり前」なご厚意なんて存在しません。
だから次はないんです。

次があるとしたら、
それもまたその場に関わる方々のご厚意です。

ぼくたちが人前に立てるのは、
そんな方々の優しさがあってのもの。

「当たり前」はそれをどうも僕たちから簡単に奪っていってしまいます。

 

 

若い子達から学ぶ

意図的に自分がブッキングさせていただいてる現場で、
僕は若いパフォーマーさんと一緒に入るように調整をしました。

もとは若いパフォーマーさんたちに場所を提供すること、
あまり経験できない(簡単には入れない)テーマパークという場での
パフォーマンスのやり方を経験してもらうことを目的に
信頼できる方だけを、施設に交渉して入っていただきました。

 

いまの若いパフォーマーさん(20代)は、
これからゴリゴリパフォーマンスやってくぜ!
というタイミングでコロナ禍にぶつかった世代でもあります。

夢見て飛び込んできたけど、
そこには何もない更地だったわけです。
綺麗な風景はありませんでした。

 

そんな世代だからなのか、
どうも見ていてその日その1回1回のショーへの意識が高い。
どうしたらよくなるのか、
この場で得られるものはなにか。

僕もひとつひとつを見られているような感じがして、
緊張しながら自分のパフォーマンスをしていました。

 

 

人前に立つことが当たり前にできた僕たち世代と、
人前に立つことが当たり前でない若い世代。

はっと気付かされることが本当に多くて、
もっとちゃんとしなきゃと思うことばかりでした。

 

人前に立てることは当たり前ではない。
見てもらえることは当たり前ではない。
ショーの対価でお金をもらえることはめちゃくちゃ貴重なこと。

忘れちゃいけない。

2020年突きつけられた現実と虚無感。
次はない、という危機感。

そして、

お客様への感謝。
その場に関わる方々のご厚意への感謝。
優しさへの感謝。

忘れちゃいけない。

 

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